尾崎 健氏のレポート <アメリカテニスクラブ事情>
  尾崎 健 プロフィール
テニスを大学から始め、コーチングの勉強に単身アメリカへ。カリフォルニアにトレーニングセンターがないことに着目し、パシフィックコーストトレーニングセンター設立を計画。 その一環としてアメリカ西海岸で唯一、そして最大のインターナショナルボーディングアカデミーを設立。


 アメリカにおける テニスの位置づけは・・・・

アメリカ人をいくつかのことばで形容すると、陽気で気さく、そして、スポーツ好き・・・ という言葉が出てくるほど、アメリカにはスポーツ文化というものが実際に存在しています。 スポーツはアメリカ人の生活に密着し、それは生活必需品である車と同様、スポーツは人生になくてはならないものになっています。

その中で、テニスというスポーツはどのような位置づけとなっているのでしょうか。
テニスというスポーツがアメリカでポピュラーになり始めたのは約25 年前の出来事・・・スポーツというもの自体が、アメリカでポピュラーになり始めたころ・・・ スポーツブームにのってテニスは一大ムーブメントを起こすまでになりました。

それまでのスポーツといえばフットボールとバスケット。 しかし、フットボールは体の大きな人や若い人でないと出来なく、またぶつかり合う為、非常に危険でした。 バスケットボールにしても身長が大きくものをいうスポーツで一般の方、特に女性にはとてもとっつきにくいスポーツだったのです。

それに比べ、テニスは身長に左右されることなく、またぶつかり合うスポーツでもないため、広く一般の方に受け入れられ、特に女性の方の支持を得て、テニスはアメリカで 3 大スポーツとしての地位までも手に入れたのです。 しかし、テニスブームがピークを迎えたのは1980 年代まででした。

スポーツをすることがブームから生活の1 つに変わり始める頃には、アメリカでのスポーツは多種多様に変化していったのです。
テニスはお金がある程度かかるスポーツであるため、そうでない人々はもっと手軽に、そして健康を考えたスポーツへ移行し始めました。
逆に お金をかけることの出来る人はゴルフへと方向転換し始めたのです。

また、今までは 1 つのスポーツしか楽しんでいなかった人がいくつものスポーツをするようにもなり、テニスは現在、ポピュラーなスポーツである反面、2番目 3番目のスポーツとして人々に愛されるようになっていきました。

 現在 アメリカで愛されているスポーツは・・・・

アメリカンフットボール・バスケットボール・ベースボール・サッカー・水泳・スケボー・ゴルフ・アイスホッケー・バイク・ジョギング・ウォータースポーツ・エクストリームスポーツ( 危険なスポーツ)など多岐に渡り、テニスは、その中の1つとして愛されているスポーツなのです。
決して無くなることのないスポーツである反面、現在は 残念ながらトップ3 には入っていません。

なぜテニスはメジャースポーツから外れたのか・・・・ アメリカでのスポーツの基本的な楽しみ方は 2つです。
 1 つは自分がプレイすること、もう 1 つは観戦です。 どうしてテニスのプレイ人口が減ってしまったのでしょうか。 いくつかの要因が挙げられます。


(1) テニスをプレイしたことのある方ならお分かりでしょうが、テニスは見た目以上に激しいエクササイズを必要とするスポーツなのです。
フットボールのようにフィジカルコンタクト( ぶつかり合う)などはありませんが、常にダッシュを必要とする激しいスポーツに分類されます。
そのため、年齢とともにテニスが出来なくなってしまう方が出てきたのです。
もちろん、プレイは出来ますが、若かった頃のような動きが出来なくなり、それがジレンマだったり、つまらなくなってしまった人が多い様です。

(2) 激しい動きをするスポーツに絶えないのが、怪我がどうしても多くなってしまうことです。
スポーツ文化が発達すると、スポーツが科学的に分析され始めました。 そうした中で、体によいエクササイズは・・・という結論からテニスは少し外れてしまい、一般の方が休日、リフレッシュをするため軽く体を動かすスポーツとしては少し危険な種目と判定されたようです。

(3) 技術を要するスポーツとして、テニスはある程度の練習と技術の習得が必要なスポーツで、手軽に楽しめるスポーツでもないのです。
サッカーなどは動きまわるので運動量の多いスポーツではありますが、いきなり参加しても十分楽しめるスポーツです。
しかし、テニスは初めてラケットを握った方にとっては、これほど思い通りにならないスポーツは他にはないのではないかというくらい難しいスポーツです。
他にはゴルフも同じことが言えます。

 
学生時代にやっていた方がまた始めるということはあっても、年齢が30 歳を越え、日常が忙しく体が鈍ってきたために、健康のためスポーツを始めようとする方には、特にこれからのスポーツという感じにはならないようです。
逆にテニスを選ぶのはその難しさゆえ、ある程度はまるとやみつきになるということなのです。



 アメリカテニスクラブ事情

それでは観戦するスポーツとしてはどうなのでしょうか・・・
フットボールのようにフィジカルコンタクトのあるスポーツはテニス以上に危険です。 しかし、アメリカにはフットボールシーズンになると「フットボールウィドー」( フットボールに夫を取られた未亡人)という言葉があるくらい、ものすごい人気を誇っています。

  観戦するスポーツとして人気が高いものには いくつかの理由があります。

スポーツのフィールドの大きい事。フィールドが大きいスポーツはそれだけ収容人数が多く、盛り上がるのです。
 フットボールだと8 万人、ベースボール、サッカーだと5 〜 6 万人の人が集められます。 それに比べると、テニスコートは少し小さすぎる様です。

フィジカルコンタクトがあるフットボールはもちろんですが、アイスホッケーリンクはテニスコートを少し大きくした程度ですがとても激しいフィジカルコンタクトがあります。また、乱闘なども起ります。そういった激しい中にあるハプニングなどが見るスポーツとしては大切な要素なのです。
ボクシングは明らかにテニスコートより小さいですが、殴り合って相手を倒すというもっともフィジカルコンタクトの基本的なスポーツなのです。

得点が沢山入るバスケットなどは収容人数は1 万人程度でテニススタジアムとそれほど変わりませんが、常に得点が入り、点が入るたびに観客は盛り上がることが出来るのです。 紳士のスポーツとして始まったテニスでは1 ポイント入るたびに盛り上がるのは少し不自然です。

グループスポーツであること。 個人スポーツより、団体競技の方が見ていて楽しい人が多い様です。
アメリカなどは 日本に比べると個人主義とはよく聞きますが、それでも人間の基本的な本能でグループでの連携プレイは一人で最初から最後まですることより、面白さが違います。

ラケットボールというスポーツを皆さんご存知でしょうか。 20 年前アメリカでとても流行したスポーツの1つなのです。
しかし、今はほとんど姿を消してしまいました。一時はプロトーナメントもあったのです。 理由は試合をするコートが小さすぎるため(テニスコート半分以下)観客を集められなかったことと、ボールスピードが速すぎて遠くからは何をしているのか分からないのです。

テニスコートサイズは見るスポーツとしては、もっとも小さなサイズに分類されることになります。
このように見るという視点からもテニスは決して悪くはありませんが、少し中心から外れてしまっているのです。


 
ビジネスとしてのテニス・・・・

スポーツの人気としてみたテニスのお話を最初にしましたが・・・ビジネスとしてみた時、テニスはどのようなものなのでしょうか。
なぜならアメリカには本当にたくさんのテニスクラブとゴルフクラブが存在しているからです。 1つの街に必ず 1 つのテニスとゴルフのクラブがあるほどです。それだけ、需要があるということです。

その中に必ずあるのがテニスレッスンプログラムです。大人から子供、グループや個人のテニスレッスンが各テニスクラブで行われています。
そこには必ずテニスインストラクターと呼ばれるスタッフが専門にいてクラブ運営スタッフとは関係なく、テニスを純粋に教えるためのスタッフとして各テニスクラブに数名のスタッフが配置されています。
このように、レッスンプログラムが充実し、それを教える専門のインストラクターが沢山在籍しているスポーツはテニス以外にはとても少ないのです。

テニスはスポーツとしてのポジションより、ビジネスとして立派に独立しているわけです。 ただ少し形態が違うので、日本とアメリカのテニススクールプログラムの違いを比較して、テニススクールビジネスに匹敵するその他のスクールビジネスがアメリカには存在しているのでしょうか。

テニス以外のスポビジネスとしてレッスンが行われているスポーツはありますが、わざわざレッスンを受けて習おうとするスポーツはテニスとゴルフが中心です。 そのゴルフにしてもテニスほどレッスンプログラムが組織だっていません。
それは最初に触れた、「技術を必要とするスポーツ」であるため、スポーツとしてはとっつきにくい反面、ビジネスとしては成功しているのです。


 テニスクラブ存続のために必要なこと・・・・

アメリカのテニスクラブでは20 年前に比べてテニスをする人口は減っていますが、現在横ばい状態が続いており安定しています。 需要が落ち着いてきているため、今後上向きになる可能性があると見られています。
アメリカではテニスクラブが淘汰されるというところまでには至っていませんが、テニスメンバーシップだけによる運営維持はかなり大変なところが多いという事実は見逃せません。 ただ、アメリカの場合、テニスメンバーシップ以外をテニススクール事業でまかなおうという発想は、日本ほど強くはないのです。

先ほどアメリカのテニスクラブには必ず、レッスンプログラムが存在しているとお伝えしましたが、スクール事業による運営サポートという発想ではなく、テニスクラブプログラムの充実という意味合いの方がかなり強いのです。

新しいテニスメンバーシップを獲得、または在籍しているメンバーシップの方々へのサービス内容の充実と向上というポジションでのスクールプログラムです。なぜならスクールビジネスに力を入れ過ぎるのはアメリカでは問題だと指摘されているからです。
そうすることで、テニスメンバーシップの必要性と魅力が薄れてしまうからです。

テニススクールビジネスを充実させすぎるとテニスレッスンだけを受けに来る人ばかり増え、会員にならなくなってしまいます。
そのため、テニスクラブにおけるテニススクールビジネスは必要である反面、それを収益の柱にしてクラブ運営をサポートするという発想でクラブを運営しているところはかなり少ない様です。
黙っていても入会してくれる時代は当の昔に終わり、いかに現在のメンバーに納得してもらえる充実したプログラムを持っているかがメンバーシップの増減に大きな影響をもたらしています。

これらのメンバーシップを維持するためにテニスクラブ側は沢山のプログラムを用意しなければなりません。
そしてプログラムがすべての会員をカバーするものでなければ、例えばミセスだけに多くのプログラムを用意するだけでは、男性や子供たちを持つ若いカップルは入会しませんし、辞めてしまうケースもあります。

プログラムの充実が必要なのは、テニスクラブに入会するにあたり、友達同士での入会という形はほとんどないためクラブへの入会は、ほとんどのケースで、個人もしくは家族会員での参加がほとんどのため、テニスクラブにあるプログラムを利用して、友達になったり、家族同士の付き合いが始まったりします。
プログラムが無いと、最初 1人でクラブにいっても誰も知らないし、プレイする相手がいないため、そのうちにつまらなくなって辞めてしまうケースが多いのです。

 アメリカでのメンバーシップ獲得と維持にあたり、2 つの大きなポイントは見逃せません。
1 つめは、入会するに当たって、魅力ある充実したプログラムをテニスクラブ側が提供できるかというところです。ここで入会するか否かが決められます。
次は入会後、1 〜 2ヶ月以内に充分なサポートをしてあげるというところでこの2 つをクリアーすると会員定着率は高くなります。

また魅力ある施設作りも会員を満足させるためにとても重要な要素となっています。施設の老朽化は会員離れを起こすもっとも大きな要因なため、各クラブともに毎年のメンテナンスは欠かせません。
そして現在魅力あるテニスクラブというのは、テニスだけをするところというより、トータルフィットネス施設が必要となってきています。
なぜなら、現在の主流となっているのはフィットネスビジネスだからです。

テニスクラブという施設を利用し、トータルフィットネスファシリティーに作り替えているケースが増えてきています。
特に郊外型や地方のテニスクラブほど、トータルフィットネスファシリティーへと変貌しています。

またテニスクラブとしての機能としては、12 面以上のテニスコートが要求されておりエリアによってはインドアも必要となっています。
その他、エアロビクスルーム、プール、エクササイズルームとマシーン、ウエイトジム、ジャクジー(泡風呂)なども必要な要素となっています。
さらに、クラシックなテニスクラブではレストランも必要な施設となっています。現在盛んなフィットネスは、ビジネスマンが仕事前、仕事後に一汗流して帰ったり、昼間女性の方が、体を鍛えるためウエイトトレーニングやジョギングなどを楽しみ汗を流すというのが当たり前のようになっています。

フィットネスの形態も、フィットネス専門の施設として運営するところと、テニスクラブにフィットネスの要素を取り入れた施設の 2 通りに大きく分かれています。 フィットネス専門の施設は現在24 時間営業で行っているところも増えており、テニスクラブが生き残る道としてテニス&フィットネスクラブへと変化していくことと同時にフィットネス専門の施設とも戦わなければならなくなっています。

しかし、競合を避けるためテニスクラブは独自のオリジナリティーをしっかりと出せるかというところが大きな勝負の分かれ目となっているようです。
カリフォルニア州などは、どちらかというと都会では土地の値段が上がり過ぎているためエリアの確保と建設費用の関係でそのような大きなテニスクラブやフィットネス施設の建設が大変難しくなっており、魅力的なテニス&フィットネスクラブを新たに建てるのは難しくなってしまっているのです。

 クラブでの楽しみ方・・・・

アメリカのテニスクラブはスポーツを通して汗を流す社交の場になっています。 しかし、どちらかというとアメリカでのテニスクラブという場所はテニスをする、スポーツをする汗を流すということが中心であり、日本のようにテニスに日常の場を持ち込むことは少ない様です。

日本でしたら、例えば午前中に練習に来るミセスなどは自分のお弁当や飲み物を持ってお昼をみんなで和気あいあいとして食べたりしながら、一日をテニスクラブで過ごしますがアメリカではまずそのようなことはしません。 テニスクラブにそういった日常を持ち込まないのです。
たとえ食事をクラブで取るとしてもフルーツやサンドイッチを軽くつまみ会話を楽しむ程度です。

夕方に訪れる男性会員もビールを飲むことはありますが、決して3 杯も4 杯も、ましてや酔っ払うほど飲むことはとても少ないのです。喉が渇いたので、それを潤すために水ではなく、ビールを飲んでいるのです。 テニスクラブで酔っ払うということはこの上なく恥ずかしい行為なのです。

また、テニスをする時間ですが、クラブには3 時間以上いることはまずありません。どんなに長くても、テニスを2 時間ほどプレイし、みんなとおしゃべりしてシャワーを浴びたら、帰っていきます。
日本のように、テニスクラブに半日、または1日いてプレイする方はほとんどいないのです。ですから、テニスクラブでの楽しみ方は日本の方に比べて、非常にライトな感覚なのです。それは、スポーツがアメリカでは生活の一部になっているため、逆に丸1 日かけてスポーツをするという感覚が無くなっているからです。

最近のスポーツに対する感覚はさらにライトなものになってきており、カフェラテを片手にテニスを楽しむという感覚でテニスをしています。 ですから、アメリカでのテニス会員のテニスの楽しみ方は、日本でのスクールに通っている方のテニスの楽しみ方ととても似通っています。

スポーツがどんどんライト感覚になってきているため、ゴルフも一時期のような丸一日かけてでもやりたいという方が少なくなってきています。
スポーツが生活に密着すればするほど、手間と時間がかからず、なまった体を動かし汗を流すことが出来るものにどんどん移行しています。

 日本、アメリカを問わず、今後テニスをプレイする人口を増やすには手軽で気楽に出来るテニスをいかに提案し、提供できるのか
 課題なのではないでしょうか


以上、日本よりもスポーツが盛んな国との印象があります米国のスポーツ環境とテニスの愛好者としての視点、並びに、事業者、ビジネスとしての視点が丁寧にレポートされた内容をご紹介しました。 このレポートはインターネット上に公開されています。


別紙にご案内しておりますSST(スポンジ・スーパーテニス)の内容は、こうしたレポートによる関係情報が入手されてから競技開発を進めたものではありませんが、テニス事業者として、また、愛好する人達としてテニスに関わり、接する上での課題点の解決につながる特徴が多々あります。

 SST の特徴につきまして・・・
既存のスポンジボールを使用したテニスを素材に、基本となります硬式テニスの長所、短所を把握した上でSSTの中に活かす点と改善工夫を図る点など、延べ20数年間の実技研究を重ねて参りました。

別記資料にご案内の国内初の車椅子テニス環境開発の研究、経験と運動機能に軽度から重度まで障害のある人達を対象とした競技開発、更に全盲など視力障害の人達のテニス参加に向けた20数年間の開発経験なども参考に、すべての人達が楽しめるテニスとして誕生したのがSSTです。